愛の領分 (文春文庫)(藤田宜永/著)

大人の小説です。
深く激しいが、静かで穏やかでもある。
混沌とした人生に終わりが見えたとき、人はどうするのか。
今回は再読ですが、完成度の高い小説だと改めて思いました。
直木賞受賞作と深く頷ける作品の一つ。

この作品の文庫版には『自伝エッセイ―受賞者が語る直木賞受賞までの軌跡 母親の顔』というのが収録されているのですが、これがまたとても深く心に刻まれました。
穏やかな顔で棺に横たわる実母に向けた藤田氏の言葉が胸に痛かった。
「その顔で僕を育てていたら、あんたの人生も僕の生き方も変わっていたよ。素直ないい子で、親と同居して、あんたの気に入った嫁をもらって、福井で一生送ったかもしれないのに。残念だったね。どうして、その顔で僕を育てなかったんだい。あんたもいろいろと苦労したのは聞いてるよ。だけど、そんなこと僕には関係ない。あんたの傷を子供の僕にぶつけるなんて最低だよ。親戚が、あんたのおかげで作家になれたって言ってた。結果的にはそうなるかもしれない。でもね、子供の頃の僕が、作家になりたいなんて思うわけがないだろう。何になりたかったか分かる?ただただ、幸せになりたかったんだ」

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