プロコフィエフ短編集(プロコフィエフ/作・サブリナ・エレオノーラ/豊田菜穂子/訳) プロコフィエフによって書かれた、一見抽象的なようで実はプロコフィエフの心の中をそのまま写し取った写実的な小説と思いました。 理解する物語ではなく、自分が受け取った印象を楽しむという意味では音楽と近しい楽しみ方をする小説かな?とも。 個人的な好みで言えば『彷徨える塔』と『紫外線のきまぐれ』が気に入りました。 やむを得ず滞在することに… トラックバック:0 コメント:0 2019年12月06日 続きを読むread more
美しき愚かものたちのタブロー(原田マハ) 日置氏って実在の人物なのでしょうか? この物語の中では唯一不本意にタブローに人生を振り回された人物と思いました。 元軍人で、上司の指示には命を懸けてでも従うという悪しき日本魂故に一生を捧げてしまった彼が不憫でならなかったです。 読みどころがそこではないであろうということは重々承知ですが。 私財をなげうって美術館をつくろうとした松… トラックバック:0 コメント:0 2019年11月02日 続きを読むread more
渦 妹背山婦女庭訓魂結び(大島真寿美) 苦手な時代物、しかも全く興味のない人形浄瑠璃の話と言うことで序盤はなかなか進まず…。 後半の、半二が取り憑かれたように作品を描き始めるあたりからは俄然面白くなったのですが。 何かに夢中になるというのは儲け以前の問題であり、それが芸術の領域となれば尚更のことでしょう。 三輪が語り出した時には「何故この構成?」と思いましたが、現代にお… トラックバック:0 コメント:0 2019年10月15日 続きを読むread more
落花(澤田瞳子) 舞台になっている時代が、生きるか死ぬか、明日も生きているか否か、という時代ということもあり、今と言う時代に通じるかどうかはさておき… 自分らしく生きるとか、自分の信じた道を行くということが、誰かの不幸の上に成り立つとしたらその誰かを不幸にすることも厭わないと言うのは読んでいて気持ちのいいものではないですね。 これが現代だったらもっと… トラックバック:0 コメント:0 2019年09月18日 続きを読むread more
バラとゆびわ(サッカレイ) バラとゆびわが指すものはなんであるのかな、と考えました。 その人の努力や生まれつきとは違うところで、人生のふとした時に手に入れることのある魅力と言ったらいでしょうか。 一時的に金持ちになるとか、肩書のようなものとか。 手に入れることができてもあっけなく失うことがあるもの、と考えたらよいでしょうか。 バラやゆびわを手に入れることが… トラックバック:0 コメント:0 2019年08月06日 続きを読むread more
第160回直木賞候補作についての個人的ランキング 第160回直木賞候補作についての個人的ランキング 第160回の直木賞候補作を全部読み、感想をアップしたので以下にまとめてみました。 今村翔吾『童の神』(平成30年/2018年10月角川春樹事務所刊) https://50595192.at.webry.info/201905/article_2.html 垣根涼介『信長… トラックバック:1 コメント:0 2019年06月19日 続きを読むread more
信長の原理(垣根涼介) 正に信長の定理。 信長の行動原理が出来上がったエピソードが描かれ、その行動原理によって信長の認識や行動が生まれ、信長にまつわる歴史が出来上がっていったのだという筋運び。 人間らしい心のふり幅を見せながらも下に自分の付くものを蟻と同じ目線で見ている不安定さがなかなか興味深い。 科学知識のなさ故の不安を神仏への信心でカバーしていた時代… トラックバック:2 コメント:0 2019年06月19日 続きを読むread more
下町ロケット ゴースト(池井戸潤) ネタバレ満載ですのでご注意を。 シリーズ3冊目ですが、ブレないですよね。 佃製作所の面々、素晴らしいです。 今回はどちらかと言うとトノさんと顧問弁護士ものがたりみたいな感じではありましたが。 続き…気になります。 いくらないいでもいいところで終わりすぎです。 訴訟問題が解決したのはスカッとしましたが、財前さんの農業発言と… トラックバック:1 コメント:0 2019年06月03日 続きを読むread more
熱帯(森見登美彦) 自分の人生は、実は誰かが書いている小説なのではないか、というテーマに書かれた小説はこれまでにもあったような? 人生は一通りではなく、パラレルワールドとして併存しているというのも決して珍しいテーマではないかと思います。 が、 「これを森見登美彦氏が描くとこうなるのかー」 と感嘆する内容でありました。 白石さんの一見「今それ?」な… トラックバック:2 コメント:1 2019年05月21日 続きを読むread more
童の神(今村翔吾) お恥ずかしながら、なにしろ歴史に疎いもので…どこからどこまでが史実に基づいているのかとか、完全フィクションなのかとか分からないのですが… いつの時代も為政者は自分の下に人を作り虐げるのが大好きなようで… 福祉制度があってもそれを破たんさせるような改変が目論まれてばかりの昨今を思うと、この小説の舞台の時代からなんの進歩もないんだな…と… トラックバック:2 コメント:0 2019年05月07日 続きを読むread more
ベルリンは晴れているか(深緑野分) 過去数年の直木賞候補作を読んできた中に実際にあった戦争を扱った小説はいくつもありますが、それぞれに切り口があって読み応えのあるものが多いと感じています。 本作は推理小説風でありながら、戦争によって人々が翻弄される様が描かれており、途中いい意味でなんでアウグステがバーベルスベルクに向かっているのが何度も忘れてしまいました。 人間ドラマ… トラックバック:2 コメント:0 2019年05月01日 続きを読むread more
クルトフォルケンの神話(図子慧) 恐らく今から30年くらい前、雑誌コバルトで読んだのが初読み。 図子慧さんのデビュー作、といいますか、コバルトノベル大賞受賞作です。 当時のコバルトのカラーで言ったら異色だった記憶があるのですが、コバルトにどっぷり浸かっていた私には予想外の方向に卓越した作品でした。 今回、作者さんご本人に電子書籍で読めるというお話を伺い再読しました… トラックバック:1 コメント:0 2019年04月22日 続きを読むread more
宝島(真藤順丈) 沖縄と言う日本本土とは異なる歴史を持った土地?場所?国?(国家と言う意味ではなく)の第二次世界大戦戦後史。 個人的にはもっと疾走感が欲しかったろ頃ですが、その疾走感のなさこそが沖縄を表現するにふさわしいのかな、とも思いました。 個人的にはやや間延びしてしまって読みにくかったです。 それぞれが同じことを胸に異なる価値観で現実を受け入… トラックバック:3 コメント:0 2019年02月05日 続きを読むread more
暗いところで待ち合わせ(乙一) 中途失明者のミチルの身近なところで起こった事件が彼女の生活にガッツリと噛んでいく流れで物語は進みます。 後半を過ぎたあたり、伏線がどんどんつながってパタパタとラストに流れていく感じが良かったです。 読み終えて、タイトルがいいな、と思いました。 本来の意味はどうなのかは分かりませんが、待ち合わせ、という言葉にべったりした感じがなくて… トラックバック:1 コメント:0 2019年01月19日 続きを読むread more
ようちゃんの夜(前川梓) 途中ちょっと間延びしてしまって読み終えるのに時間がかかってしまったけど、最後の最後で腑に落ちて涙が浮かんできた。 少なくとも自分にとっての高校時代は、人間関係と言う面から見るなら、一番恥ずかしい時期だったと思っている。 自分が何者なのかどこへ行くべきなのか、誰と会話をすべきなのか、何を寄る辺とするべきなのか、そしてこれからどう変わっ… トラックバック:1 コメント:0 2018年12月25日 続きを読むread more
還暦探偵(藤田宜永) 6つのお話からなる短編集 この手の男と女の話は読んでていやーな気持ちになることが多いのですが、藤田作品だと全く平気! 今回も安心して読み始めたのですが、はやり心配無用でした。 『喧嘩の履歴』 女性が微妙に強い感じ…(笑) 女性が強く描かれてる男性作家さんの作品って、どこかに皮肉というか揶揄というか、そいういうものがこめられてい… トラックバック:1 コメント:0 2018年12月04日 続きを読むread more
じっと手を見る(窪美澄) 全体に漂う怠惰な諦念。 完全に諦めてしまった人と諦めてきれずにいる人。 行動に起こす人、流される人。 様々な人たちがそこにいて、生まれて来た以上そこで生きている。 『そのなかにある、みずうみ』語り、日奈 『森のゼラチン』語り、海斗 『水曜の夜のサバラン』語り、畑中 『暗れ惑う虹彩』語り、日奈 『柘榴のメルクマール』語り、宮澤 『じっと手… トラックバック:1 コメント:0 2018年11月04日 続きを読むread more
静かにしなさい、でないと(朝倉かすみ) 私には、登場人物の気持ちも考え方も理解できず、でした。なんとなく分かる、という感覚もなければ、なるほどね、というような分からないけどそうなんだ?という気持ちすら浮かばず…。 『内海さんの経験』『どう考えても火男』『静かにしなさい』『いつぞや、中華飯店で』『素晴らしいわたしたち』『やっこさんがいっぱい』『ちがいますか』 いつもなら一つ… トラックバック:1 コメント:0 2018年10月15日 続きを読むread more
ファーストラヴ(島本理生) 主要登場人物のみんながそれぞれに抱えている闇を感じさせる物語でした。 がっつり描かれている環菜、由紀、迦葉をはじめ、恐らく我聞も…。 だって、大きな夢を諦めてまで一人の女を選んで貫き通すって尋常じゃないと思うのですが…(深読みしすぎ?) こういう心理物は大抵読んでいるとしんどくなります。 そしてだいたいどこかでボロボロ泣きます。… トラックバック:2 コメント:0 2018年09月15日 続きを読むread more
宇喜多の楽土(木下昌輝) 宇喜多秀家の考え方、格好いいなあと思いました。 この時代を生きた人としてはどうなんだろう…とも思いますが。 いや、今の時代に生きてても行きづらいタイプか。 豪姫の存在がこれまた素敵でした。 秀吉って何考えてるんだか分からない酷い人だな、と思うことが多いのですが、この二人を結び合わせたのは上出来だな(笑)なんて思いました。 歴史… トラックバック:1 コメント:0 2018年09月05日 続きを読むread more
傍流の記者(本城雅人) なんか…独特の世界ですよね。 一つの王国、というような。 読み切ってみると、最終的に北川が陰の支配者?という印象。 出世って、本人の技量も然ることながら、人との関係と時の運が大きく左右するんだなあ、としみじみ。 興味のない世界にしては退屈せずに読み切ったので魅力的な人と文で描かれていたのだとは思いますが、いかんせん興味がない業界… トラックバック:0 コメント:0 2018年08月16日 続きを読むread more
破滅の王(上田早夕里) つまらなくはないが面白い(読み応えがある)とも言い難い。 正直ちょっと微妙。 科学者から見た戦争、という物語は読んだことがなかったのでそういう意味では私にとっては斬新でした。 治療法を確立してこそ生物兵器としての意味を成す。 罹患者を助けるために治療に有効な抗生物質は生み出したいけど兵器として意味をなしてしまうのは苦しいという思… トラックバック:1 コメント:0 2018年08月11日 続きを読むread more
今さら聞けない科学の常識(朝日新聞科学グループ/編) それなりにおもしろかったんだけど、たぶんしばらくしたら覚えてなさそう。 個人的な興味の問題ですが。 こういうのって後でどっかで「そういえば読んだけどなんだったっけ?よく覚えてないや」ってことがほとんどの私。 読む意味ない?いやいやそんなことは…読んでるときは興味深く読んでますから(汗) 今さら聞けない科学の常識―うろおぼえを… トラックバック:1 コメント:0 2018年07月20日 続きを読むread more
第158回直木賞候補作についての個人的ランキング 第158回の直木賞候補作を全部読み、感想をアップしたので以下にまとめてみました。 彩瀬まる『くちなし』(平成29年/2017年10月文藝春秋刊) http://50595192.at.webry.info/201805/article_3.html 伊吹有喜『彼方の友へ』(平成29年/2017年11月実業之日本社刊) … トラックバック:1 コメント:0 2018年06月23日 続きを読むread more
銀河鉄道の父(門井慶喜) 宮沢賢治作品はいくつか読んだことがありますが、私にとっては理解不能なもののひとつ。 面白くない以前に全くをもって理解不能なのです。 それはさておき、宮沢賢治とその父親の話なわけですが、うーん、この時代の父と息子の在り方のひとつ、家族の在り方のひとつ、という歴史的観点から見て興味深い話かな、とは思いますが、別段面白いと感じることもなく… トラックバック:3 コメント:0 2018年06月23日 続きを読むread more
化学探偵Mr.キュリー7(喜多喜久) 献本応募に当選して届けていただいてからしばらく経ってしまいましたが… 当選したときは、自ら応募しておきながら「7?いきなり7?当たっちゃったけど大丈夫なのかな?」と思ったのですが、そんな心配は杞憂に終わりました。 これだけでも十分楽しめました。 もちろん、シリーズを読んでいた方がもっと楽しめたのかもしれませんが。 でもシリーズを… トラックバック:1 コメント:0 2018年05月16日 続きを読むread more
くちなし(彩瀬まる) ものすごい世界観だな、と思いました。 ともするとおどろおどろしい印象を与えそうなモチーフだと思うのですが、それが見事にどろっともったりと濃厚で、なのにあっさり呑み込めするりと自分の中に落ちていく、一つ読んでは読むという行為が満たされるのにどんどん読めるという、なんとも不思議な魅力がありました。 『くちなし』 愛とは…その人の一部で… トラックバック:2 コメント:0 2018年05月14日 続きを読むread more
ふたご(藤崎彩織) 世間的には割と高評価? 私にはおもしろく感じることができずに読み終えるまでにかなりの労力を要してしまいました。 後半の、夏子が作詞を完成させる過程において感情が変化していく部分も伝わりづらく、表現しようとして言葉は重ねられてるんだけどしみてこないというか…恐らく大事な場面だと思うのですが。 あとがきに自分の経験をベースに、とありま… トラックバック:2 コメント:0 2018年05月05日 続きを読むread more
MOE40thAnniversary5人展@MATSUYA GINZA(4/28) 今更ですが… 去る4/28にMOE40thAnniversary5人展に行ってきました。 5人展の5人とは… 島田ゆかさん、酒井駒子さん、ヒグチユウコさん、ヨシタケシンスケさん、なかやみわさん です。 会場に到着してまず目を引かれたのが酒井駒子さんの『ロンパーちゃんとふうせん』の複製原画。 好きなんですよ、ロ… トラックバック:1 コメント:0 2018年05月04日 続きを読むread more
LENA MARIA FOT-NOTER足で書かれた物語(レーナ・マリア/ビヤネール多美子・瀬口巴訳 長いこと読みたい本リストに入っていた一冊。 読もうと思ったきっかけは、当時小学生だった娘に勧められて読んだ学習漫画と記憶。 過去ブログをさらったら2010年10月だった。 なんとまあ長く寝かせてしまったことか。 漫画を読んだ時とあまり感想は変わらないかな… http://50595192.at.webry.info/20101… トラックバック:1 コメント:0 2018年04月25日 続きを読むread more