閉鎖病棟(帚木蓬生/著)

悲惨な体験をした人だけが精神疾患に陥るわけではなく、悲惨な体験をした人がみな精神疾患に陥るわけでもない。
なんらかの症状をみせて入院した人たちは、例え病棟が開放だろうと社会的には閉鎖病棟に押し込められたも同然なんだな、と思いました。
前半は淡々とこれから絡み合ってくるであろう登場人物数人の人生が描かれ、あまり物語に魅力を感じませんでした。
文体は読みやすいので苦ではなかったのですが。
いよいよ病棟での話に入り、それぞれの病状を抱えた人たちが共同生活をする場面から始まります。
同じ描写がラスト近くにも出てくるのですが、最初には感じなかったことを感じました。
社会性がなくなったとみなされて入院した人たちが、ちゃんとひとつのコミュニティを形成して共同生活を送っている…
そのある種の矛盾は重要な何かを問いかけているような気がしてなりませんでした。
そして、この中で起こる事件からは、精神疾患=人を思う心を失う、ということではないのだと思いました。
けれど想像してたほどドラマチックでもなく、ドロドロとしてもおらず、ちょっとハズレだったかな~と思って読みました。ラスト近くまでは。
が、終盤で軽~くやられました。
どこかっていうと、ここの部分。
『チュウさんは秀丸さんの方を見やり、「秀丸さん、退院したよ」と叫んでいた。涙があふれてきた。秀丸さんは何度も何度も頷いた。』
新川先生の精神疾患に対する解釈の記述があったからかな…。
最後まで読み通してよかった、と思った一冊です。

閉鎖病棟 (新潮文庫)
新潮社
帚木 蓬生

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新潮文庫 著者:帚木蓬生出版社:新潮社サイズ:文庫ページ数:361p発行年月:1997年05月この著


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この記事へのコメント

2008年10月18日 23:08
精神病者がむしろ健常者よりも人間性が溢れている。帚木蓬生のヒューマニズム。いい作品でした。
お茶々
2008年10月19日 22:12
こんにちは、コメントありがとうございます。
中盤、ちょっとだれ気味に読んでいたのですが、最後まで読んで「途中でやめなくてよかった~」ってしみじみ思いました。

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