恋(小池真理子・著)

ノンフィクションライターの鳥飼は、ふとしたことから浅間山荘事件と同日に起こったある殺人事件に興味を持つ。
書籍化を目的として、事件の犯人であり死期の迫った布美子にインタビューをするが、その事件の全容を聞いた上で出版をしないことを決意する。
その内容が、布美子の独白形式で語られています。

私は文庫本で読んだのですが、巻末の阿刀田高さんの解説に、「これは生死を越えた魂の約束であったはずだ。にもかかわらず、この本は書かれ、公開され(以下省略)」とありましたが…
私の解釈は、
あまりにも強く鳥飼の胸に響いたが故に何度も布美子の言葉を無意識に反芻してしまい、その結果いつの間にか彼がその脳裏につむぎ上げてしまったものが描写されたのがこの作品かな、と…。

大久保勝也を殺害する原因となる怒りが、布美子の内で沸騰する描写はとても怖かったです。
元々憎しみを感じていたとはいえ、殺したいほどの憎しみを感じたのはほんの一瞬だったはず。
その一瞬に実行してしまったが為に布美子は殺人犯になってしまった。
絶望的なまま終わってしまうのかと思ったが、マルメロの木に救われた。
けれど布美子は絶望的なまま終わったのかと思うと切なくもあった。

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